緑の恐怖

今からほぼ20年前、無作為に選ばれ横に並んで椅子に座っている5人の男達の中のひとりは僕で、もうひとりは先程結婚式を挙げた僕の友人、あとはその彼の友人、その5人の正面には同じく先程結婚式を挙げた新妻が衝立の向こうにいたのでした。

結婚式二次会司会の男によってルールの説明がされた。

先ず、新婦が5人に対していくつかの質問をする。その5人は自分こそがあなたの旦那様だよと思わせるような回答をしなければならない。その際には声色で判別できないようにボイスチェンジャーを使用する。

そしてそのゲームは始まりました。
新婦を名前で呼んだり、好きな食べ物を答えたりしたと思う。

僕は他の参加者の振る舞いを拝見して呆然とした。ちっとも本人と似てないのだ。ボイスチェンジャーで声色が変わってるけれど、全く普段の新郎の喋り方を再現していないので誰が聞いても違うと分かるレベルなのだ。

そこで僕は本人が普段どう喋っているのかを思い出し、可能な限りモノマネをしてみせた。声色まで真似なくていいからラクなもんだ。

一通りのやり取りを終えて、新婦がこの人が自分の旦那様だという人を選ぶ時がきた。何と僕が選ばれてしまったのだ。

さて、ラクな勝負ではあったが、新郎本人を差し置いて選ばれるというのも複雑な気分である。そういえばこの勝利によって何か頂けるのだろうかと思った瞬間、司会者は言った。

「いやぁ、新郎になりすましてこんな綺麗な奥様を騙してしまうこの方には、罰ゲームとして一気にこれを飲み干していただきます!」

出てきたのはグラスに並々注がれた青汁だった。
(´Д` )

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です