僅かな期間ではありましたが’72年製を使っていて、それを委託販売して’65年製に乗り換えました。
両方弾いてみて分かったのですが、どちらもムスタングなのに音は全然違うんです。
’65年製は、音が勢いよく飛ぶんです。小さな音で弾いても、遠くのお客さんまではっきり聴こえる感じ。
’72年製は、いい意味で音が安っぽい(笑)ストラトでは絶対出せない個性的な音。ガランガランした軽い音。僕は好きですよ。売っちゃったけど(笑)
なぜこんなに違うのでしょう。
その理由は、
1.塗装が’65年製はラッカー、’72年製はポリ。
2.コンター(ボディ裏面の身体にフィットするように削られた加工)が’65年製は無し、’72年製は有り。
3.指板が’65年製はハカランダのスラブ貼り。(希少)
材質や形状の違いが音に与える影響は大きいです。パッと思い浮かんだだけでもこれだけあるのですが(まだあるかも)、もう1つ大きな理由があります。
フェンダー社は1965年にCBSに身売りをします。これを機に、それまで少量しか生産できない職人組みの体制から、大量生産のライン組みへと移行します。
その後、品質の劣化、コピーモデルの氾濫等の理由で業績が悪化。1985年にCBSは楽器部門から撤退します。
一般的にフェンダーのビンテージギターをプレCBS期、CBS期として区別されてるのがこの理由からです。
つまり、CBS期前後でギターが1本出来上がるまでの手の掛け方が違うのです。
一方翌年の1986年に、フェンダーカスタムショップが設立されます。マスタービルダーと呼ばれるギター職人が材質にこだわり、工程にこだわり、ハンドメイドで高品質なギターを製作するのです。特に、マスタービルダーがひとりで製作したギターをマスタービルドと呼び、フェンダーギターの最上級グレードです。
品質の面から見て、レギュラーラインがCBS期、マスタービルドがプレCBS期な感じでしょうか?
例えが乱暴ですかね(笑)
ビジネスとして成り立たなかったら本末転倒ですが、やっぱり手が掛けられたモノはいい。作り手の本気を感じるというか、ありきたりな言い方をすればタマシイを感じるのですよ。僕もマスタービルドのストラトを所有していますが、音からも手触りからも職人の本気を感じます。
いつもお世話になっている(笑)ギターショップで、この’65年製を一発鳴らした瞬間、しっかり感じましたよ、タマシイを。
その直後、「ヤバい。これは買うしかない。今持ってる’72年製のを売ったらいくらになるんだろう?」
って考えてました(笑)
でも、これって作られる全てのモノに例えられるんじゃないかなぁ。
作り手の本気やタマシイを感じた時、「買いたい」とワクワクしたり、「買ってよかった」と安心できるのだと思います。